かくして日本柔道チームは、復活した~井上康生監督に観る組織・リーダー~
ロンドン五輪の金メダル0から、リオ五輪で全階級メダル獲得へと柔道日本代表チームを復活させた柔道全日本男子監督:井上康生氏が日経ビジネス2016/10/16号の編集長インタビューに応えました。
この記事を読んで、考えたことをまとめてみます。
・組織とは
組織にとって必要な条件は、以下の3つです。
- 新陳代謝があること
- 合理性
- 柱があること
・新陳代謝があること
井上監督は、ロンドン五輪の結果を踏まえ、
- トレーニングに海外の格闘技の要素を取り入れる
- 基礎となる肉体作りをスポーツ医学の観点から臨む
といったこれまで、日本柔道界では、どちらかと言えば異端視されていたトレーニングを取り入れました。
これは、日本の柔道が国際的な「JUDO」に対抗するために、井上監督が考えたものです。技術を窮める日本の「柔道」を基本にしながらも、国際的な「JUDO」を研究する姿勢を通すことで、海外勢に対抗する実力を代表選手につけさせたのです。
ビジネス畑でも、新しいプロセスの選択に躊躇することが、ままあるのではと思います。しかし、変化の激しい現代社会では、常に国内・海外を問わず、より良いものであれば取り入れるスタンスは必須条件です。インタビューには、ありませんでしたが、新しいトレーニングを取り入れるには、躊躇する意見も多々あったのではと思います。しかし、男子柔道がどん底で再建が必須だったこと、井上監督の海外でのコーチ留学の経験が、押し上げたと考えます。
・合理性
ロンドン五輪後、柔道日本代表チームは、質より量を重んじたトレーニング方針を質を重視した練習に切り替えました。井上監督の言葉を借りれば、精神論ではなく、『意味のある努力』を目指したということです。例えば、ただ乱取りの量をこなすのではなく、海外のJUDOの練習法を取り入れたトレーニング、試合で起こりうることを想定した稽古です。
ビジネスにおいても、量をがんばってこなすだけでなく、合理的に生産性をアップさせるステップを目指すべきと思います。
・柱があること
組織において、新規性・合理性を目指しても、目指す統一されたゴールが存在しなければ、「糸の切れたたこ」のように逆に混乱するでしょう。合理性の中にも統一された方針は不可欠ではないでしょうか?
・組織と人
ネガティビストであり、かつポジティビストである
組織の個人のスタンスについて、考えてみましょう。仕事を進めるための基本スタンスとして、しばしば「PDCA」サイクルが取り上げられます。ここで、大切なのは、P(Plan)の段階では、最悪の状況を想定したネガティビストであること、D(Do)の段階では、やるべきことを全てやったという開き直りを持ったポジティビストであるということです。また、井上監督のインタビューでは、開き直りは、充分に準備をしたという根拠のある境地であり、勝っても負けてもいいやというやけくそとは、違うという言葉があります。
慎重に準備を行い、本番で100%のパフォーマンスを発揮することがビジネスにも求められると思います。
・リーダーとは
井上監督のインタビューで考えたリーダーのあるべき姿について、まとめてみたいと思います。
リーダーに必要な条件として、
- 信頼感
- 失敗を忌憚なく話せる
の2点を挙げます。
信頼感をメンバーに与えることは、リーダーの柱になると考えます。信頼感が統率力に繋がり、組織(チーム)を1つにまとめ上げます。
「失敗談を話すことは、ネガティブな点から目をそらすなというメッセージであります。技術的な意味でも精神的な意味でもですが。」と井上監督はインタビューで語っています。柔道でもビジネスでも日常生活でも、ネガティブな感情から目をそらしていれば、いざそういう状況になった時に対応できないです。メンバーに対して愛情があれば、自分と同じ轍を踏まないためにも、失敗談は、語っていくべきだ思います。
・まとめ
柔道日本代表チームの再建を基に組織のあり方、リーダーのあり方について、考えてみました。これからは、ここにまとめたことを実践していければと思います。