たかくのブログ

ソフトウェアの品質管理、特にテスト、そして、映画と音楽、お酒とラーメンの話を綴ります。

日本語、練習するの!? ーSEA Forum in May 2017 [「伝わる日本語」の練習 ]ー

なんだか、唐突なタイトルになってしまいました。

こんにちは、たかくです。

一昨日(2017年5月18日)、SEA(ソフトウェア技術者協会)主催の

「SEA Forum in May 2017 [「伝わる日本語」の練習」に参加してきました。

テストエンジニアとして、日本語の重要性は、認識していたものの、

高校で、国語が大っ嫌いだったたかくとしては、かなり避けていたテーマです。

ですが、思い切って、受講してきました。

 

では、報告まで!!

1.アウトライン
   先日、阿部 圭一先生(静岡大学名誉教授)と冨永 敦子先生
  (公立はこだて未来大学准教授)が『「伝わる日本語」練習帳』を出版されま 
  した。今回のフォーラムは、この出版の背景(現在の大学・産業界の状況)
  について、お二人に講演いただき、さらに演習・意見交換を行うものでした。

 

2.サマリー1

  阿部先生の講演要旨です。

 

 (1)なぜ、今、日本語文章技術か

  ・日本の現状:「文学的な文章」と「伝わる文章」が、別々に教えられている
  ・オフィスの生産性向上が、産業の生産性向上につながる時代であるにも
   関わらず、日本語表現技術は、拙いままである
       阿部先生は、この現状を非常に憂いていらっしゃいました。
 
 (2)なぜ、「伝わる日本語」練習帳を出版したか
  ・日本語表現技術は、アメリカのEnglish Writingに比較して、30年遅れている。
       ・日本語表現技術の拙さは、仕様書・マニュアル・特許文書を作る上で非常に
   マイナスである。
       ・日本の学校教育の現状を観ると、情と理のテーマがごちゃ混ぜであり、
   素材の選別と表現の構造化に対する考慮も不十分である。
       ・IEEEにおいても、英語表現技術の研究グループがあるにも関わらず、
   日本には意見交換の場すらない
   (大学間においても、大学・企業間においても)。
       ・日本語技術の書籍は、自己啓発本として、いくつか出版されているが、
   言いっぱなし、書きっぱなしの域を越えていない。
       ・このような現状を打開する一歩として、今回、『「伝わる日本語」練習帳
   を出版されたそうです。
 
 (3)練習の大切さ
   阿部先生の教育者としての経験に基づくと
            ・学生の論文力向上⇒添削が効果的だが、コストパフォーマンスが悪すぎる。
            ・そのため、「赤ペン添削」になりがちになる。
            ・しかし、赤ペン添削は、事実上、教官が直すものであり、なぜ、
    直されたか学生は考えない。
        そうです。※「うん十年前」のたかくは、そんな学生の1人でした。(^-^;)
 
  阿部先生・冨永先生は、学生が自律的に学習できるようにするため、
  今回の出版に際して、
           ①先行者の意見を広く集める。
   ②語、文、パラグラフ、全体構成の各レベルと重要度を考慮して、
    取り上げる指針を選ぶ。
   ③全ての指針を単に並べるのではない。
   ④例題・演習問題を豊富に含める。
   ⑤題材をなるべく広いフィールドから集める。
  ことに腐心したそうです。
       
 (4)阿部先生の描く未来
   ・「日本人のための日本語教育」学会が設立されて欲しい。
   ・そして、大学・企業の枠を超えた意見交換の場であって欲しい。
  このことを切に願うとして、阿部先生は講演を締めくくられました。

3.サマリー2

  冨永先生の講演要旨です。

  冨永先生は、公立はこだて未来大学での教育カリキュラムを中心に

  講演されました。

  (1)公立はこだて未来大学:1年次の必修科目

   ・公立はこだて未来大学:1年次においては、プログラミング、数学に次いで、

   「文章表現教育」が必修科目になっています。

  (2)「文章表現教育」のカリキュラム

   ・授業形態は、対面授業とeラーニング(オンデマンド)の
    ブレンド型授業です。
   ・対面授業では、技法に関する講義が、eラーニングでは、演習が行われます。
   ・1クラス80名の必修科目であるため、eラーニングに対面の
    ピア・レビューを加えています。
   ・ピア・レビューには、あらかじめ、観点チェック項目が決まっています。
   ・1クラス80名の大所帯であるため、ピア・レビューは、学習者同士の
    少人数グループで行われます。
   ・eラーニングでは知識の獲得が、ピア・レビューでは他者からの指摘が
    得られ、相乗効果が得られます。

  (3)ピア・チューターリングによって得られるもの

   ・公立はこだて未来大学には、「学習支援センター」が設置されています。

   ・チューター役は、教官ではなく、TA( technical assistant )役の学生が担います。

   ・「文章表現教育」においても、TA役の学生ががんばっています。

   ・学生は、後輩を指導することにより、自分自身も大きく成長します。

   ・「文章表現教育」においても、「何が良い点か」、「何が改善点か」を

    学生自身が考えることにより、自律的に学習します。

 
4.まとめ
 ・これからの産業界・大学の両方において、「日本語表現技術」の向上は、
  必要不可欠な要素になっていると思います。
 ・大学教育においても、これまでの講義中心のカリキュラムだけでなく、
  ピア・チューターリングの導入が大切になっています。
  公立はこだて未来大学においても、チューター役の学生は、社会性スキルの指標
  「Kiss-18」のポイントがアップしているそうです。
 ・社会人のOJTでも、背中を見せる職人気質の教育でなく、
  業務外における演習(コンテンツを選りすぐる必要はありますが)と
  新入社員同士のピア・チューターリングの導入を検討する
  時期に来ているのではないかと思いました。

 参考リンク

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E4%BC%9D%E3%82%8F%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%80%8D%E7%B7%B4%E7%BF%92%E5%B8%B3-%E9%98%BF%E9%83%A8-%E5%9C%AD%E4%B8%80/dp/4764904551

 

http://www.kindaikagaku.co.jp/literacy/kd0455.htm